「リーダーさんはお忙しいんじゃねえの?オレなんかに話しかけないで他のことしてろよ」
ああまた言っちまった。言われた戒は無表情ながら、哀しそうな顔しているのが分かる。あれから戒に八つ当たりばっかしている。口実は「大活躍してることが羨ましくて」ってことにしてるけどさ、本当はただの八つ当たり。
お前があのメンバーにしたから「アンナコト」になったんだ、ってどうしても思ってまうんだ。
ごめんな、戒。お前は全然悪くないんだ。けどさ、シャドウはお前らが倒しちまって、当たれる人間が他にいなかったんだ。もう少ししたら、落ち着くから。そうなったらなんかおごってやるな。ゆかりッチは、後が怖いし、関係ねえし。真田サンに当たろうとも思ったんだけど、また土下座されてらたって思うと、どうにもやる気になんねえんだ・・・・。
やるたびに自己嫌悪に陥るけど、どうしても戒の前だとやってしまう。
最初はホテルで戒に言ったっきりにしようと思ったんだ。
んで、すっきりしたところで、青春のほろ苦い失敗ってことにして、真田サンとはちょーっと距離を置いて。それで終了。
だけど真田サン、あのあとオレが風呂にはいってたら乱入してきて、オレのをか、かきだしやがった・・・・!!
うわあああ思いだしたくねええ!!
真田サンはオレがどんなに嫌がっても「俺が出したんだから俺が始末するのは当たり前だろう?」って済ました顔で綺麗な指をオレの、ナニにつっこんで掻き出してった・・・・・・。正気に戻った状態であれは恥ずかしいどころの話じゃねえ。召還器に本物の弾込められたら、それで自分撃ってたな。真田サンは撃てないし。
そのくせその後はなんにも言わねえ・・・・・・。オレにも前と同じように接してる。3日間も真田サンが近づくたびにびくびく反応してたオレが馬鹿みてえじゃねえか!!
そんな感じで苛々して、ついつい戒に文句が出てくる。
ああもう今日は土曜日だし、一日中戒みたいに一人カラオケやってストレス発散してみようかな・・・・・・。それともゲーセン行ってゾンビとか撃ちまくろうかな・・・。
オレは頭を抱えてソファで唸りながら、今日の過ごし方を考えた。
「順平」
聞き覚えのある声に、ゆっくり後ろを振り返ると真田サンが立っていた。アンタ下でグローブ磨いてたんじゃなかったのか!?
「な、なんっスか!?」
やっべ、声が裏返った。
これじゃ意識してるって丸分かりじゃねえか。真田サンはとっくに忘れてんのに・・・・。
けど真田サンは何も言わずにオレの腕を掴むと歩き出す。
「どこに行くんっスか!?」
「付いて来れば分かる」
「でっか!!」
高級住宅が並ぶ団地の一角にその家はあった。門には「真田」と彫られた石の標識が見える。
つーことは真田サンの実家か?なんでこんなとこ連れてきたんだ。
真田サンは平然と門を開けて中に入っていった。キョロキョロしててもしょうがないので後をついていく。
大きな庭で品のよさそうな女の人がたくさん植えてある花や木の世話をしていた。真田サンはその女の人に話しかける。
「ただいま帰りました、母さん」
「お帰りなさい・・・・・・あなたー!明彦さんが帰って来ましたよー!」
あきひこさん?・・・・・・・・ああ、真田サンのことか。
「そちらの方は?」
「俺の」
横から見る真田サンの顔はキリっとしててやっぱ格好良かった。
「俺の大切な人です」
喋らなければな。
「あらあら駄目よ。明彦さん」
真田さんのお母さんはその発言を冗談と思ったらしい。ニコニコ笑ってる。
「大事な人を連れてくるなら先に言っておかないと。おもてなしできないじゃない」
めっ、と真田サンを叱る。
「すみません」
うわ、普通に謝ってる真田サン初めて見た気が・・・・・。ってか今なんか幻聴が・・・・・・・・気のせいか。
真田サンのお父さんはものすげえ格好良くて、なんてーの?自分の世界をしっかり持ってるオジサマ。見た目は真田サンに似てないのに、オーラが似てる気がする。なんとなくだけどさ。
うちの飲んだくれの親父とは大違いだ。真田サンのお父さんは真田サンのこと殴らないんだろうな・・・・。ははっ、当たり前か。
広いリビングにあるソファにオレと真田サンが並んで座る。向かい側のソファにあ真田サンのお父さんとお母さん。
なんか言い出しそうな気がして怖え・・・・・。暫く無言の時間が続く。うう、こーゆーの苦手だ・・・。ってかなんでオレはここにいるんだ?落ち着くために差し出されたお茶を啜ってみた。
あ、旨い。
「お父さん、お母さん。この人が俺の選んだ、将来伴侶になる人です」
ぶうっ(お茶を吐き出す音)
「いきなりナニ言い出してんすかー!!?」
「む?ナニって・・・きちんと言っておかないと」
「あのねえ真田サン!普通の家は、大事な息子が男を連れて来て、これが自分の伴侶なんか言ったら勘当モノですよ!?」
というかオレは了承した覚えはねえ!!アレか?真田サン本気で責任取るつもりか!?冗談で済ませてくれるかな・・・・。しんとする室内。沈黙が怖かった。
「でかした!」
ええ!?
「私もお前位の歳には母さんと一生を共にしようと決意したものだった・・・・。明彦、よくぞそんな相手を見つけてきた」
「まあ懐かしい」
オレが男ってことはスルーっすか。
「もう一人くらいお母さん息子が欲しかったのー」
ニコニコ笑うお母さん。
「健康的な色気もあって良いじゃないか。君、名前はなんと言うんだい?」
「え、えと、イオリジュンペイっす・・・・」
「漢字でどう書くのかしら?」
「伊賀のい、織物のおり、従順のじゅんに平和のへいっス」
なんか流されてないかオレ。オレの反応が変なのかな・・・・・。呆然としてる間にどんどん話は進んでいく。
「お母さんは教会で式を挙げてくれると嬉しいわ」
「相手のご両親にはもう会ったのかい?」
「まだ伺ってませんが、順平が了承すればいつでも」
「ふむ」
そっか、真田サンが変わってたのは、親の影響もあったんだな・・・・。
「順平君!私たちは知り合って間も無く、お互いのことを全く知らない。そこでだ、親睦を深めるために親子水入らずで今から二人でにお風呂に入ろうではないか!!」
「あら、駄目よあなた。いくら順平君が可愛いくても、明彦さんのなんですからね。それより順平さん。お母さんと一緒に入らない?」
「どっちも駄目です。俺と一緒に入りますから」
「独り占めはいけないぞ?明彦」
「そうよ明彦さん。それじゃあみんなで入りましょうよ。ちょっと前に改築したから大人数でも大丈夫なの」
ホームドラマでやってそうなくらい、ほのぼのとした家族団らんの図だけどさ、内容がコレ!?
『伊織順平のプロフィールに、(3年の真田先輩の婚約者でもある)が付け足されました』
オイ、変なナレーション入れんじゃねえよ!!
真田サンの家の風呂はおっきかったことだけ言っておく。あのノリに押し切られちまった・・・・。
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