もう駄目だと思いながらもどうすることもできず、ただぎゅっと目を瞑り身を固くすることしかできなかった。
順平を掴もうと腕を伸ばす塊。
しかしソレが順平に触れることはなかった。
「ポリデュークス!!」
掛け声ともに巻き起こる風。何かが壊れるような甲高い音。
予想していたソレの触れる感覚がいつまでたっても起きない。
(・・・・・?)
疑問に思いそっと目を開けば、半透明の巨人が出現していた。
招待がわからないという点では黒い塊と同じだが、纏う空気が全く違う。
黒い塊は例えるなら・・・悪意や害意が形をとったらあのような姿だろうか、絶対に相容れないものという気しか起きなかった。
しかしあの巨人にはそれがない。むしろ神々しい様子すら感じられた。
『ソニックパンチ』
巨人が空間を殴る動きをすると、目に見えない衝撃波が生み出され塊を吹き飛ばした。
ソレは吹き飛ばされた先で暫くのた打ち回った後、跡形もなく消滅した。
すると巨人も空気に溶けるようにして消えていく。
助かった・・・・・。
だけど、アレはなんだったんだろう?
わけのわからない事態ばかりが続いている。
「まったく・・・。なんでシャドウがこんなところに・・・・」
(え?)
低音の落ち着いた男性の声に、順平の頭は真っ白になる。
見れば、入り口に男性の姿が。
気味の悪い塊でもなければ、動くことを停止した棺桶でもない。
自分と同じ、普通の人間だ!
ところが、男性はへたりこんでいる順平に気付かず立ち去ろうとする。
待ってくれと叫びたかった。自分がここにいることに気が付いてはしかった。
だけど、今までの恐怖のためか、襲われずにすんだ安堵のためか、どうしても声が出せない。
(待って)
(置いてかないでくれ)
(オレに気付いて)
順平の必死の祈りが通じたのか、男性は立ち去る前にふと店内を見回し、順平に気が付いた。
「大丈夫か!?」
男性は順平の元に駆け寄ると、跪き抱き起こそうとすが、腰が抜けていて立ち上がれない。
人の体温を感じたくて、座ったまま男性に思い切り抱きついた。
「!?」
男性は少し驚いたようだが、振り払わずにぎこちなく順平の頭を撫でる。
「怖かったろう。よく、頑張ったな」
優しい言葉に今まで堪えていたものが溢れ出す。
言葉にならない思い。
「きがついたら、こんな、ん、になって、て」
「・・・・・・へんっ、なのが・・こっちに、くるし」
「・・・オレ、こわ、こわくって・・・・」
後は嗚咽になって言葉が出てこない。
ボロボロと溢れる涙。格好悪いとか思うこともできないほど混乱していた。
「わかったから・・・もう喋るな」
そのまま順平は気を失い、最後に順平の顔を覗き込みながら男性が呟いた言葉は誰にも聞かれることなく、消えていった。
「俺が守る・・・・だからもう泣かないでくれ」
あとがき
なんとかノーマルかんせーい!このまま押し倒すこともできそうですが、ノーマルルートなのでここで終了。
この時点で順平に落ちた真田(自覚・無自覚問わず)もいるし、前から落ちていた真田もいるし、状況に分けて使い分けてます。たぶん。
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