11「ただ剛毅たれ」       



  「おっせーな順平の奴・・・・」
待ち合わせ場所で時計を見ながら呟いた。もうかれこれ20分も待ってる。
またアイツ寝坊しやがったか?
あ、オレのことが誰かって?オレは順平のダチ兼保護者ってとこだ。名前は・・・・まあ、ナナシとでも呼んどいて。
オトコの、しかも同い年の奴の保護者なんか変だって思うだろ。けどな、あながちこれが間違いってわけでもないんだな。
順平ってさ、本人気付いてないけどけっこうモテるんだ。・・・・・ただしオトコに。
なんてーの?こう・・・・無邪気に笑ってる顔見てると泣かせてみたいって思うらしい。
オレは慣れたからそーでもないけど、たまにクラッとしないこともない。まー、一時の血迷いでユージョー失うのも馬鹿らしいから我慢しますが。
とりあえずオレは誘蛾灯のようにオトコを無自覚にたぶらかしまくる順平を長年守ってきたわけだ。
オレっていい奴。なのにアイツときたらオレの涙ぐましい努力も知らないで夏はタンクトップで学校来るし。あれはどう考えてもヤバイだろ。
なのにヤメロって何度注意したって信じねえんだ。「まさっかー!オレ男だぞ。ありえねえって」って笑うだけ。
その無自覚さに助かってるとこもあるんだろけど。

「伊織、愛してるんだ!!」(ひっしと抱きついて本気の告白するクラスメイト・♂)
「おー、オレも愛してんぞー」(笑って抱きつき返す)

ソイツがどんだけ本気な顔しててもこんな調子でかわす。本人にかわしてるって意識ないだろけどな。強めのスキンシップくらいにしか思ってねえ。
アホだ・・・。

ってもう30分たってるよ。電話かけてみっか。
そう思いケータイの電話帳に登録してるアイツの番号を呼び出した。

・・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

おっせなー、早く出ろよ・・・・。

「・・・・・・ッハイ・・・・」

おー、やっと出たよ。
「おっせえよ順平!いつまで待たせるつもりだー!!」
「・・・ワリッ・・・・、も、ちょい、まって・・・・」
くぐもった声。なんか様子が変だな。
「早くしろよー、帰っちまうぞ」
「あぁ・・・いま、いく、からっ・・・」
ボソボソと他の人らしい声もする。ナニ言ってんのかはわかんねえ。誰か近くにいんのか?考えていると

「ダメだって・・・うごくっな・・・ぁ・・・やっ、ああ・・・!」

ツー、ツー、ツー・・・・・。
甘ったるい声が聞こえた後、電話は切れた。

・・・・・あー、なるほどー。

さっきの話だが続きがある。
鈍鈍なアイツだが同じ寮のオトコに捕まったらしい。アイツは隠してるつもりだけどオレにはバレバレだ。何年ダチやってると思ってんだよ。
順平が幸せそうだからほっといてるけどな。
メール送信っと。

『用事思い出したから帰るわ。体調悪いんだろ?お大事にー』

腰を、とは可哀想だから入れないどこう。オレに知られてるって知ったらアイツ、ショックで死にかねねえしな。知らない振りしてやってる。
ほんっとオレっていい奴。
こんな優しいオレサマに感謝しとけよ順平?・・・・・・今度ワックでもおごらせとこっかな。


END

あとがき
理解ありすぎる友人、ナナシ君(仮)
昔ナルさん(ナルミネさん)と「理解ある友人が守ってくれてんだろね」みたいな話をしたことがあって、そこからこんなのあったらおもろいなあという欲望に任せて書きました。
ありえないだろうと突っ込みたくても、ギャグだからと無理矢理納得しといてください。
順平の相手はこの話では特に決めてないのでご想像にお任せします。題はこれが一番合う気がしてこれにしました。なんとなくですが。
追記。んでもこんなことやらかすの真田だけ?という気がしてきたけど、まいっか。