「一途な思い」       


  僕は子供です。少なくとも同年代の子よりも精神年齢が高いとは自負していますが、小学生という事実に変わりありません。
以前はそれを認めるのが好きではありませんでしたから、子供扱いをされると多少反抗したりもしました。
ですが今はそれほど気にしていません。事実ですから。
それに、子供扱いにもそれなりにメリットがあることに気が付きました。
今のように。

「順平さん一緒にお風呂入りません?」

このとき『恥ずかしいけど、勇気出して言ってます』というふうに見せるのがポイントです。具体的にはそっぽを向いて、ただし頬を紅く染めてたりしてね。
順平さんは僕のことを(僕にとっては不本意ながら)弟のように思ってますから、こんな風に言われると頼られてるって思うらしくて喜ぶんです。
「おー!いーぜー」
順平さんは携帯ゲーム機から顔を上げてると案の定あっさりオーケーします。
『コイツも子供っぽいとこあんじゃん。しゃーねーなー』とか思っているのが丸分かりです。
そういうところも可愛いと思ってしまうあたり僕は末期なんでしょうね。

僕は順平さんに恋をしています。
順平さんは男で、6歳も年上で、普通なら恋愛対象にどう転んだってならないはずなのに。
何故か好きなんです。
僕は子供ですから、たとえ「躰の洗いっこ」をするときに「多少」変なところに触れてもそれは「偶然」なんです。
少なくとも順平さんはそう思ってくれます。
思いっきり故意ですが。いやあ順平さんってホントに敏感で特に背中とか触れられると駄目なんですよね〜♪
ついでに躰のチェックも兼ねています。
悪い虫に喰われていないか調べるのに、これほどもってこいの場はありませんしね。
今のところは大丈夫なようですが、油断は禁物です。
僕が子供なのは変えられないなら、今はそれを最大限に利用する時期です。
策略家?腹黒い?計算高い?とんでもない!子供は子供なりに恋に必死なだけです。
特に順平さんみたいにライバルが多い人だと手段なんて選んでいられません。
順平さんに近づく虫はみんな駆除しないとね。

ああ、僕ってなんて一途なんでしょう。

END