「壊れかけの嘘」
*EDから数年後の設定。くっついてません。
「きょーのメシはなにがいっかなーっと」
エプロンの紐を絞めながら考える。肉食いたいけど今月あんま余裕ないしなあ・・・。
それに食べるのがオレ一人だとやる気出ねえしなあ。
うーんたまには楽にヤキソバでいくか。
「よし決定!」
ピンポーン
その途端玄関のピンポンが鳴る。回覧板か?
「へーい」
ピーンポーン ピンポーン ピンポンピンポンピンポン
そんなに長くない廊下兼キッチンを歩く間にもどんどん間隔が短くなってきている。
一回でわかるっつーの!
「ハイハイ今でるってば!!」
これでピンポンダッシュとかだったら怒るぞオレは。ドアを開けるとそこには。
「・・・真田さん」
「・・・・・」
真田さんが無表情で立っていた。脇に体を寄せれば勝手知ったるナントヤラ、そのまま無言で靴を脱いでオレの部屋に上がりこんでくる。
ドアと鍵を閉めたオレは真田さんの後を追った。
「ちょっと待っててください。お茶淹れます」
「いい」
真田さんは振り返ってオレの腕を掴んで抱き寄せるとそのまま荒々しいキスをする。
「・・・ぁ・・・・っ」
「お前が欲しいんだ」
そう言うと真田さんはオレを床に押し倒して服を脱がせ始めた。
いつもより荒っぽいその抱き方にも真田さんの快楽に慣らされたオレはあっさりと順応して乱れていった。
目を覚ませば布団にオレは横たえられていた。・・・・・・ああそっか、気絶したのかオレ。なのに躰はきちんと後始末がされてて、すっきりとしていた。
真田さんがやってくれたのか。躰をおこすと枕元にオニギリとメモが置いてある。
『先に帰っておく。食っておけ』
一つ手にとって食べてみると、少し不恰好なソレは美味しかった。
ずるいよ、真田さん。好きな人がいるくせに。そんな風に優しくして。
「ふ・・・・・」
涙がかかってしょっぱいけど、もしゃもしゃ食べる。
なんであんなこと言ったんだろ。
「好きな奴はいる」
彼女が出来てはすぐに別れてまた付き合うを繰り返す真田さん(ほら、あの容姿だし。告白されてオッケー→私とボクシングとどっちが大切なの!?で別れているらしい)に
「本命はいないのか」って聞いた答えがそれだった。まだこの人は誰にも捕まっていない。彼女と別れたばかりの真田さんには悪いけど、オレは嬉しかった。
オレは真田さんがそういう意味で「好き」だったから。けどオレ男だし。せめて傍にいられたらなあって思っていたのに。
「告白する気はないんっすか?応援しますよオレ」
絶望で真っ暗になりながら聞いてみる。ホントは応援なんかしたくないくせに。でもするんだろうな。オレって自虐癖があったんだなー。真田さんは自嘲しながら言う。
「・・・・ソイツは男だが、それでもか?」
「・・・え」
「だから告白する気はないさ。女はその代わりだ」
オレは男だから、諦めたのに。
なんでこの人が好きになった男の人がオレじゃなかったんだろ。
どうして。
「・・・・どんな人ですか?真田さんが好きになった人って」
「・・・・・・真っ直ぐで、笑顔が似合う」
すごく愛しそうに、哀しそうにそれだけ真田さんは言った。じゃあこんな風に後輩の振りしている臆病者のオレとは全然違う人なんだな。
「ずっとそのままのつもりっすか」
「ああ」
ずるい。なんでオレがこんなに欲しい心をその人は簡単に手に入れているんだ。
真田さんが付き合う女の人はみんな綺麗な人たちばっかで。男なんかに思われても気持ち悪いだけだろうって思っていたのに。
だったらオレでもいいじゃないか。
「それじゃ、オレとしません?」
するりと言葉が出てきた。真田さんは目を見開いて信じられないモノを見る目でオレを見ている。
後にはもう引けない。
「男同士ってキョーミがあったんっすよ」
「別に処女とかないし」
「最近欲求不満で」
すらすらと笑いながら言葉が出てくる。こんなの何でもないって顔して、提案をした。
「期間は真田さんがその人とくっつくか、オレが彼女作るまで」
「どーすか?」
震える手はテーブルの下に隠したから大丈夫。沈黙がすごく重い。冗談ですよって言おうとしたその瞬間
「・・・・・・じゃあ、そうさせてもらうぞ」
え。
「じゃ、交渉成立っすね」
初めてのキスはなんだか苦かった。
それからオレは真田さんとスルようになった。だいたい1か月に4,5回で、真田さんの気が向いたときにオレのところに抱きに来るのがここ半年続いてる。
性欲処理なだけなんだからもっと手荒でもいいのに真田さんはオレをすごく丁寧に抱く。
好きな人とオレを重ねているのかな?
それだとちょっと哀しいけど仕方ない。最初からわかってたことだし。
どっちにしろ代わりのオレでこうだったら本物だとどんなに優しくなるんだろうな。
結局真田さんはその人にまだ告白していないらしい。
その人が真田さんを受け入れるか拒絶するか分からないけど、真田さんが動いたその時にこの関係は終わるんだろう。
できればその日は来ないでくれたらいいなと、しょっぱくなったオニギリを噛み締めながら思った。
あとがき
順平苛めるのってすんごい楽しい・・・・。(おい)いやいや愛してはいるんだけど。 好きな子ほど苛めたいっていう心理?なんとなく思いついたネタ。
そう見えなくても真→←順なんです。どんなに真←順に見えても。 つまりどっちも空回り。あー楽しかった。
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