「未完成の関係」*壊れかけの嘘の続き
「行ってくる」
「行ってらっしゃい・・・あ、真田さーん」
玄関で靴を履いてるだろう真田さんにキッチンで食器を洗いながら声をかける。
「何だ?」
「今日の晩御飯は何がいいーっすかー?」
今日はバイトも授業もないから腕によりをかけて作りますよと言うと
「お前が食いたい」
「真田さーん、オレは真面目に聞いてるんですけどー」
「俺も真面目に答えてるぞ?・・・・中華が食いたいかな」
「中華っすねー。わっかりましたー!」
玄関の方に声をかけると真田さんがこっちに戻ってきた。
「・・・・?」
「忘れ物をしていた」
何だろう?そう思っていると真田さんの顔がどんどん近づいてきて。
ちゅ。
・・・・。
「真田さん!!!!」
正気に戻って叫んだ頃には真田さんはもうキッチンから出ていて愉快そうに笑う声だけが返ってきた。
「じゃあ、行ってくる」
そう聞こえた後バタンと扉の閉まる音がして静かになる。
顔が熱い。
食器を持ってなくて良かった。持ってたら絶対に落としてたよオレ。
てゆーか
「どこの新婚夫婦だよ・・・・」
あの後オレと真田さんは一緒に住みだした。
スル時以外でも真田さんがちょくちょく来るようになって。
オレが作った飯を一緒に食べるようになって。
前は帰ってたのにそのまま泊まることが多くなって。
でもオレの家は二人だとけっこう狭かったんだ。
そしたらある日真田さんが「部屋借りたからな」って言ってきて。
わけがわかんないうちに気が付いたら引っ越して一緒に住んでた。
一緒に住みだしてから驚くことばっかだったなあ。
なにせほっとけば三食牛丼喰うし。
掃除したらよけいに部屋汚くなるし。
洗濯機回したら泡吹いて壊しそうになるし。
あんたどうやって生きてたの?ってあんときゃ問い詰めたくなくなった。
まあ、途切れなかった彼女にやってもらったんだろうけど。
オレには嫉妬する権利なんてないのにチクリと心が痛む。
だってオレただの代用品だし。
真田さんとスルようになってもう一年がたつ。
まだ真田さんは好きな人に告白してないらしい。
その人に言う代わりにだろうか、一緒に住むようになってから真田さんはよくオレに「好きだ」って言う。
だからオレは正直に「オレもです」って笑って答える。真田さんが本当に言いたい人はオレじゃないのになって思いながら。
そしたら真田さんは暫くオレを見つめた後溜息を一つ吐いてあちこちにキスを降らせてくれる。
くすぐったいし、恥ずかしいけどその瞬間がすごく嬉しい。
テレビ一緒に見てて目が偶然合ったら自然と笑いあったり
何もしない夜も抱き合って寝たり
ただいま おかえり いってきます いってらっしゃい って声掛け合って
こういう日がずっと続いてほしいなって食器を洗いながら思った。
END
あとがき
テーマは「鈍感順平・苦労人真田」後でオマケ(真田視点)UPします。