「思い出せない」
リョージが混ざったニュクスをやっつけて。みんなで戦おうぜって約束したのにアイツは一人でデスを倒して。
・・・・・かっこつけすぎだっつーの。もっと頼れ!オレ様を。
そのくせ平気な顔して還ってくるんだもんなアイツ。心配して損したぜ、マジで。
で、全部終わった後、オレと真田さんは二人で寮の二階のソファに並んで座っていた。
他のみんなと一緒にラウンジで馬鹿騒ぎやっていたのに、一人、また一人と電池が切れたオモチャみてえに突然眠っちまって。
しょうがないからってソファに全員を転がしてからこっちに避難してきた。
結局残ったのはオレら二人だけ。
たぶん、みんなみたいに眠ったら全てを忘れてしまうんだろうとぼんやり眠気に襲われながら思う。
今でさえも少しづつ、何かを忘れていってる気がする。例えば、屋久島のコト。
行ったことは覚えていても何をしたのかは思い出そうとしても真っ白になっちまってる。
わかっていたことだけど悲しい。
「順平」
無言で座っていた真田さんがオレの名を呼ぶ。この人にはずいぶん助けてもらった。
そういえば、コンビニで影時間に遭って泣いていたときにも助けられたよな。あの時から、真田さんはオレの憧れの人になった。
ある意味一目惚れか?コレ。
まあ、もとからかっこいいなーとは思っていたけど・・・・。まさか付き合うようになるとは。
「怖いか?」
忘れることだろうか、それとも忘れられること?たぶんどっちもだろう。
「・・・・・正直、すっげえこわいっす」
怖い。忘れたらもう「今」のオレに戻れないんじゃとか、この人との関係がただの先輩後輩のままじゃないかとか。
なんかどうしても考えてしまう。
この人女子にすっげえ人気あるし。なんでオレなんか選んだんだろう・・・。
あー、なんかすっげえ暗くなってきた。
「真田さん」
「ん?」
「手・・・・繋ぎません?」
「ああ」
真田さんはいつも嵌めている黒い手袋を外すとぎゅっと手を握り締めてくれた。
じかに触れる暖かい掌。
生きてる。
だけど、今まで過ごした日々を知っている
そりゃあ、いいことばっかじゃなくてケンカもしたし泣きもした アイツにゃ散々つっかかったな そういや
キレイゴトだけじゃない世界も見てきた
だからこそ 仲間を オレを この人を 信じられるんだ
「明日、起きたらみんな混乱するでしょうね」
「ああ」
「オレらなんか手、繋いでるし」
「ああ」
話しているとだんだんまぶたが重くなってきた。そろそろ限界か。
「わすれても・・・おもい・・・だしましょ・・・ね」
「ああ・・・」
「じゃあ・・・」
「そつぎょう・・・・・また・・・・な」
卒業式にまた。真田さんが言った言葉を最後に視界が真っ黒になった。
「・・・・り!」
誰かが呼ぶ声がする。よく知った人の声だ。だるい。体がだるすぎる。
「・・・・おり!おい!いおり!」
ほっといてくださいってば。だいたい誰のせいだと・・・
「おい伊織!起きろ!」
・・・・・・・・あれ?
目が覚めた。ら、真田先輩が目の前にドアップで写っていた。しかも超不機嫌顔だ。
「センパイ・・・オレの部屋でどうしたんすか?」
「知らん。というかここはお前の部屋じゃない」
あたりを見回すと自分が寝ているのはソファ、近くに自動販売機、階段。
どう見たってここはオレの部屋じゃない。
「・・・・・なんでこんなとこででオレ寝てるんだ?」
昨日は確かに自分のベッドで寝たよな
・・・・あれ昨日?昨日はなにしてたっけ・・・?
「それはこっちの台詞だ。目が覚めたらココにいた」
しかも手は・・・といい掛けて止めなにか知らんか?と聞いてくるが首を振る。先輩にも聞いてみようか。
「センパイ、昨日なにしたか覚えてます・・・よね?」
「当然だろう。・・・・・ん?」
怪訝な顔をしている。どうやらオレと同じようだ。
確か昨日は誰かと・・・
何か大事なことを約束したような
「おい伊織!何泣いているんだ!」
慌てた先輩の声。
「え・・・・?」
いつの間にか涙がいくつもこぼれおちている。
「あ、あれ?なんでだ?」
袖で拭いても拭いても涙は溢れ出てくる。止まらないんだ。
「わかんねえ・・・・」
大事なことを忘れた気がするのに思い出せない。
涙はいつまでも落ちていった。
end
あとがき
っていうの考えました。記憶が一週間くらいかけてだんだんきえていっても良かったんですが表現できないので
こんな感じに。
うーんもっと精進せねばなあ 明
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