「あ・・・ああ・・・」
目の前の光景に順平は呆然となった。さっきまで自分は普通にコンビニでマンガを立ち読みしていた。
それが突然店内が暗くなったと思周りを見渡せば、さっきまで人がいたところに不気味な棺桶らしきものが存在しているだけだ。
自分のように普通に動いているニンゲンなど、どこにもいなかった。
「なんだよ・・・・これ・・・・」

なんで。なんで。なんで自分はこうして考えて立っていられるんだ!

普通の人間は嫌だった。
自分にはどこか「特別」なものが備わっているはずだと思っていた。
他の人間とはどこか違う、特別のもの。
それがなんなのかなんて知らない。いつか気付くと考えていた。

だけど、こんな特別なんて望んでなかった!


「ひっ!」
遠くから何かの唸り声のような、叫び声のような声が聞こえてきた。
いままで聞いたことのない、不気味な声。その声が聞きたくなくて、耳を塞いでしゃがみこんだ。

―――いつの間にかできていた血だまりの上に。

「うあっ」

どうすることもできないで、目を瞑った。

もう何も聞きたくない。
知りたくない。
帰りたい。
あれほど退屈だった日常が懐かしい。

ところが。
そんな順平の願いも空しく、ずるり、ずるりと何かが這いずり回るような音が塞いだ耳を伝って微かに聞こえてきた。
恐る恐る目を開く。

思わず目を疑った。

ソレはいつの間にか店内に出現し、順平へと迫っていた。

紅い瞳がギラギラと光る黒い塊。
そこから何本も手が辺りを探りながら動いている。

『アレ』はなんだ。
脳が理解するのを拒む。
夢であってほしい。
けれど、覚める気配はまったくなくただ目の前の光景が現実なのだとわかってしまう。

血だまりの中を後ずさりするが、すぐに後ろの飲み物を冷やして陳列しているガラスの棚にぶつかってしまった。

べちゃり。気味の悪い音を立てながらソレはゆっくりと近づいてくる。

「くんなよ・・・・」

べちゃり。

「くんなってば」

べちゃり。

「頼むからあっち行けよ!!!」

床に手をついたせいで血に染まった手で追い払うが全く効果がない。

そして、ついにあと一歩で順平に手が届くところまでソレは近くに来た。


あとがき
「あんなもの、見たことがない」(BY アバチュ・オープニング)
ってなわけでコンビニでファーストコンタクトー!!こっからノーマルルートと鬼畜ルートに分岐します。