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かみさま、もしいるのならおねがいです。
もうこれいじょう・・・・・・・・。


目を開くと真田さんの顔がぼんやりと映った。今にも泣き出しそうな顔をしてる。
泣かないで、言おうとしたけどガタッと音を立てて立ち上がったのでできなかった。
「順平!?目が覚めたのか!?」
目を見開いた真田さんは背を向けて走り出す。
「待ってろ!!先生を呼んでくるから!!」
そのままポツンと部屋に一人残される。持ち上げかけた右手が寂しい。ってあれ?包帯が巻いてある。
起き上がりあたりを見回せば、白一色の清潔感のある、けど殺風景な部屋にオレが寝ていたベッド。
隣にはテレビに細長いロッカーやさっきまで真田さんが座ってたパイプ椅子。
もしかしなくてもここって。
「病院だったり?」
バタバタとこっちに向かってくる足音を聞きながらオレは首をかしげた。



「キオクソーシツ!?オレが!?」
自分を指差す。そりゃ、テレビとかマンガとかでは良く見るけどホントにあったんだ。ってか
「オレ覚えてますよ!?そこの真田さんのことか今までのこととか」
何故かオレの後ろにいてオレと一緒に説明を受けてる真田さんを見る。
真田さんはずっと無言でオレに付き添ってて別に真田さんがここにいることに先生も反対しなかった。
「いえ、伊織さんの場合欠落といった方が正しいかもしれませんね。あなたはここ1年程の記憶がないんです」
はあ!?


さっきまでは普通に診察を受けてたんだ。そんで医師(せんせい)になんで自分がここにいるのか教えてもらってて。
「へー。オレ火事に遭ったんっすか」
だから包帯が腕に。
「そうです。まあ事故とかの日の記憶が飛ぶのはよくあることですから心配ありませんよ」
「そんなモンっすか。しっかしセンセー、やけに暖房効いてるっすねー。まだ9月なのに」
そういった途端医師の顔色がさっと変わり、矢継ぎ早に次々と質問される。


名前は?
大学何年生?
今は西暦何年の何月?
昨日は何してた?
その他色々。


その勢いに押されて一個一個答えていく。


伊織順平。
大学1年。
えーと2011年の9月。
昨日は・・・・レポート書いてた。
その他色々。


で、答えた結果が「落ち着いて聞いてください。伊織さん、あなたはおそらく記憶喪失です」だもんな。嘘だろって思う気持ちもわかるよな?
「詳しい検査をしないと分かりませんが、おそらく確かでしょう。現に今は―――」
窓の外を指差されて見れば葉が落ちて裸になった木が数本立っていた。
「12月です。それも2012年のですから、あと少しで2013年になります」
え。



 

こういう症状は稀にですがあります。
おそらく死に直面した伊織さんは火事の記憶を消そうとして消しすぎたのでは?
下手に思い出そうとすると精神に負担が掛かりますから、気長にやっていきましょう。


治るっすよね?と震える声で問いかけた。


それはわかりません、とだけ首を振って答えられた。