あれから真田さんは前の優しかった時とは別人みたいにオレを抱いた。
最初に言い出したのはオレなんだからオレに責任があるんだろう。
自業自得だ。


写真は棄てることも持って帰ることもできなくて、結局ベッドと壁の隙間に落としておいた。
怒られるかもしれなかったけど、もうどうでもよかった。だからそんなとこにあるなんてすっかり忘れてたんだ。


脱げと言われたら脱いだ。
舐めろと言われたら舐めた。
上で腰を振れと言われたら腰を振った。

言うことを黙って聞くオレを真田さんは淫乱とよく呼んだ。悦がってたから確かにそうなんだろう。
だけど言ってる真田さんの方が辛そうな瞳をしてた。
その瞳が見たくなくて真田さんといるときはずっと俯いてた。
真田さんは止めたくても止められないんじゃないかなと思う。
その苦しさをオレにぶつけて、でも優しいからオレにぶつける自分にまた苦しんでるような。
そして真田さんはオレに「オマエの『好きな人』がこの姿を見たらどう思うだろうな?」ともオレを抱きながらよく言った。
真田さんがそう言うのはだいたい最後の追い上げのときだったから、オレは喘いでいて何も答えられなかったけど。
じゃあ、真田さんはこの姿どう思います?ってオレの方が聞きたかった。


つらいんなら止めましょうよ、何度言いたくなったかわからない。
けどオレにそんなことを言う権利はなかったから黙っているしかできなかった。


冷たい態度やオレを嬲る言葉。
だけどどんなに乱暴にあつかっているように見えてもオレが傷ついたりすることはなく、やっぱり最後は丁寧に抱いていた。

ごめんなさい。オレのせいなんだから、自分を責めないで。ごめんなさい。
夢の中でいつも謝った。起きてちゃそんな言葉言えなかったから、せめて夢だけでも言いたかったから。


抱かれた夜、気絶してそのまま真田さんの家のベッドで過ごすことも良くあった。
そうすると真田さんはオレが寝ていると思ってオレを大事そうに腕の中に閉じ込めてた。
泣きながら「済まない」と謝って。
泣かないでと言って涙を拭いたかった。
だけどそれはオレが寝ているときだけに見せる本音。オレには知られたくないんだろう。
それなのにオレが知ってると真田さんが知ったら、真田さんが傷つくと思って何も言えなかった。

どうすることもできないままに日はどんどん経っていく。
そして、オレは記憶を失った。

違う。

オレが、自分で忘れたんだ。




あとがき
真田もけっこう哀れ。嫉妬で暴走してたのから正気にもどったのはいいけどどうすることもできなかったんです。既に手遅れ。