違う。

オレが、自分で忘れたんだ。

前みたいに笑い合える関係でいたくて、なかったことにしたんだ。真田さんはそれに乗っただけ。
せっかく上手くいってたのに。忘れられていたのに。恋人だったって信じてたのに。

「なんでっ!!」

なんで思い出しちまったんだ!!

隠さなきゃ。

どっかに。

なかったことにしなきゃ。

早く!!!

「全部燃やした筈だったのにな」

え?

「知ってるか、順平」

振り向けば、いつの間にか背後の入り口に真田さんが立っていた。
あの時と同じ冷たい瞳をして。

「俺はお前が好きだったんだよ。―――それも高校のときからな」

一歩、また一歩近づいてくる。

「滑稽だろう?一人で空回りして、挙句お前を脅してまで抱き続けて」

怖い。思わず尻餅をついたまま後ずさるけど、直ぐにベッドにぶち当たってそれ以上後ろに下がれなくなった。

「あ・・・・」

「例え『昔』のお前が俺を好きだったとしても、思い出した『今』のお前にそれはありえんだろう」

オレの前で跪き視線をオレの高さに合わせた。

「今度はビデオに撮ろうか?いや、逃げ出したら同じか」

まるで無邪気な子供が名案を思いついたときのように微笑んだ。だけど子供はこんなどろりと濁った瞳をしてない。

「・・・・・・こうすれば、一生俺のものになる」

両手がこっちに向かってくる。まさか、と思った瞬間にはもう首に手が掛かっていた。





あとがき
真田ヤケクソ状態。最初ベッドの脚にベルトで順平の両手を括り付け&口に布をつっこませて(話せないように)延々とナニ(ぇ)させようとか思ったんですが上手くいかなくて変更。