「ぐっ!!」
首を両手でぐいぐいとすごい力で締め付けられる。
苦しい。
外そうともがいても、手を引っ掻いてもびくともしない。
息ができない。
真田さんは壊れた笑みを浮かべてオレを見つめてる。
どこか壊れてしまった真田さん。
オレがそうさせたのか?
・・・・・・・・・・も、いっか。
それで真田さんが満足するならあげるよ。
抵抗するのをぴたりと止めた。
真田さんの驚いた顔。
苦しいけど、真田さんを見つめてなんとか無理矢理口を笑みの形にした。
やっぱ最期の顔ってソイツを思い出すとき一番出て来やすいし。
いつでもこの人にとってのオレが笑顔でありますようにと願った。
・・・・・・・視界がだんだん真っ白になる。もう苦しいとかもわかんねえ。このまま死ぬんなら楽だな。
さよなら。
意識が切れる、と思った瞬間突然首を締め付けていた手が外れた。
「ごほっ、ごほっ、ごほっ」
一度に大量の酸素が肺にどっと入ってきてむせる。
片手で喉を、もう一方で口を押さえた。
視界が一気にクリアになる。
涙がぼろぼろ流れ出た。
「何故!!」
目の前の真田さんはさっきまではなかった理性を瞳に宿してる。あの狂気はもう見当たらない。
「何故、笑うんだ!!」
答えたくても息がまだ荒くて話せない。
「俺はお前を殺そうとしたんだぞ!?散々酷いことをしてきたんだぞ!?」
まあ確かに何考えてんだよオレ。
抵抗しなかったら死ぬだろ。
ヤベェ、やっぱ酸素が足んねえと人間ロクなこと考えねえな。
でもホンキで思った。
真田さんになら殺されてもいいかなって。
死ぬ間際に出たホンネってことか?オイオイカンベンしてくれよ・・・・。
答えたくても息も絶え絶えで喋れない。
「何故なんだ!?」
どうしたらこのひとに伝えられるだろう。
ベッドに寄りかかってた躰を真田さん側に傾け。
顎を掴んでキスをする。
真田さんは目を見開いたけど気にせずに続けた。
なんでって・・・・・・。
真田さんが好きだからに決まってるじゃん。
・・・・・・・なんとか喋れそうだ。唇を離すと目を合わせる。
「アンタが・・・・それ、で・・・・満足するなら・・・・ゴホッ・・・・・いいかなって・・・・」
「!!」
「イヤだって、ずっと言いたくて、言えなくて、すごく・・・哀しかった・・・・・・」
オレも聞きゃ良かったんだ。真田さんの好きな人は誰ですかって。
正直にオレはアンタが好きですって言って、ぶつかって早く傷つけばこんなことにはならずにすんだ。
「も、いーです。真田さんがずっと・・・・・苦しんでたの、知って、ますから」
最初に言い訳イロイロ言って保健かけて逃げ道作ったのはオレだ。
「オレも、真田さんもどっちも悪かったっす」
気付いてた。
ずっと何か言いたそうにしてる瞳に。
けどオレはずっとそこから瞳を逸らしてた。
「好きです」
オレはこれくらい平気だから。
「オレは真田さんが好きで、真田さんはオレが好きで。それでいーじゃないっすか」
そんなに自分を責めないでください。
「だから泣かないでください・・・・」
真田さんの瞳からいつの間にか流れ出していた涙を頬に手を添えてそっと拭う。
静かに静かに零れ落ちる透明の雫。
やっと言えた。
それでも涙はとめどなく流れ出してく。
まるでずっと塞き止めてた水が一気に溢れ出したみたいだ。
「・・・・・・ずっと止めたかった」
「知ってます」
「あの時お前に、好きな奴ができたって聞いて・・・・かっとなって・・・・・」
「・・・・・・それでえらい壊れてたんっすか」
「躰が欲しいんじゃない、お前が欲しいと・・・正直に言えば良かったんだ・・・・・」
「・・・・なんか馬鹿みたいっすねオレたち」
傷つきたくなくて、言いたいこと黙ったまんまお互いを追いかけて。
「・・・・・ああ」
「でも・・・・・無駄じゃなかった・・・・・」
諦めなくてよかった。
「好きだ」
「好きです」
今まで何回も言ってきた言葉なのに初めて言ったような気がした。
自然と近づくお互いの唇。
瞼を閉じながら考えた。
今まで言えなかったぶん、思いっきり好きだと言おう。
何度でも 何度でも 好きですって。
END
あとがき
とりあえず完結。でも14話(オマケに近いです)あります。14話はかなり初期の時点で書き上げてたんですよね。なのに13話がえらい難産でした・・・・。
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