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「来い」

一言だけしか書いてない、件名も入ってないそっけないメール。
普通の人が見たら意味がわかんないだろう。
けどオレにはもう何度も見た呼び出しのメールだ。



もうここに何度来ただろう。渡された鍵で扉を開けながら考える。
部屋に電気はついていなかった。窓からさす月明かりを頼りに廊下を歩く。

一番奥の寝室。その部屋が約束の場所。


「こっちだ」
真田さんはベッドに腰をかけていた。
その顔はゾッとするほど冷たい。
無言で近づいていくと真田さんの一歩手前まで来たとき、止まれと言われた。
「脱げよ」
「・・・・・・」
「聞こえなかったのか?オレは脱げと言ったんだが」
震える手でコートのボタンを上から外していく。
「それでいい」
真田さんは満足げに肯いた。

コート。

トレーナー。

シャツ。

ベルト。

ジーンズ。

脱いだ服が足元に音を立てて積もっていくたびに肌の冷たい空気に触れる面積が増えていく。
真田さんは何も言わずオレが脱ぐ様子をじっと見つめてる。

ついにオレは身に着けてたものを全て脱いで裸になった。

ぎゅっと目を瞑っていても真田さんの視線が何度も躰を上下に這っているのがはっきりと分かる。

手を引かればあっさりとオレはベッドに倒れこんで、その上にのしかかられる。





「忘れるな。順平、お前は俺の物だ」

耳元で囁かれるコトバ。
その吐息にさえ反応してしまう自分に反吐が出そうだった。

あとはいつもとおなじ。



・・・・・・いつも?

知らない。オレは「いつも」なんて知らない。

・・・・・・・・これも夢だ。夢だから。忘れてしまおう。




いつもとおなじ朝。
真田さんと一緒に目を覚ました。朝日が眩しい。
「おはようございまーす」
「おはよう。いい夢は見れたか?」
「う~ん、それが憶えてないんっすよ」
「そうか」
今日も楽しく過ごせそうだ。