連日出動した反動で疲労者が続出したため、今日はタルタロスを中止にする、と聞いたのは数時間前のことだった。
それは慣れたとは言え、他のメンバーとは違い体力的にかなりた劣る天田にとっても朗報だった。
久々に早めに休めると嬉々として布団に入ったというのに。
「・・・・眠れない」
閉じていた瞼を開けると時計を見つめ、溜息を吐いた。
眠ろうとしてから少なくとも1時間はたったというのに一向に眠りの気配すら来なかった。
SEESに入る前ならいざ知らず、12時以降まで起きることに慣れてしまった現在ではたまにこういうことがある。
そしてそういう事態のときの対処法にも慣れた。
横たわっていたベッドから上半身を起こし床に足を下ろす。
そっと扉を開けると自室を抜け出して抜き足差し足で廊下を渡る。
目指すは隣の、いつも天田をいつもからかうくせに笑ってる憎めない人の部屋。
幸いというか予想通りというか起きていたらしく明かりがドアの隙間から漏れ出ていたのを確認して扉を開ける。
「順平さん?ちょっといいですか」
いいですか、と疑問の形をとりながらも拒否されることはないと天田は知っていた。
順平はいつだってしょうがねえな、と笑いながら受け入れるのだ。
SEESのメンバーは学校のクラスメイトとは違い自分の過去や背景を知って尚且つ近くにいて強い絆で結ばれている。
その寮の人間の中でも順平は特に親しい部類に入る。
女性陣と話すと玩具にされがちだし、真田は論外・・・と言わないまでも尊敬しているが共にいて楽しめるかかというとソレは別な問題なのだ。
主人公はどこかに出かけているし、夜中に押しかけるほど交流があるわけでもない。
本人に言う気はないけれど天田よりも年上ばかりが集まるこの寮のなかで一番近くで話せたのは順平だった。
そう、『トモダチ』なのだ。
順平が大量に所持しているいるゲームを二人で対戦するもよし
順平曰く「お宝」である本の隠し場所を探るもよし
どうでもいい話を二人でするもよし
順平といると暇つぶしには事欠かない。
そして深夜まで遊んでいるうちに天田が疲れて寝入ってしまったときは、順平は起こして追い出すでもなくベッドに移して共に寝る。
ふわりと浮いて自分が運ばれた感覚がしてベッドに下ろされた後、隣にごろりと順平が寝転がる気配がするとどうしようもなく嬉しかった。
順平の、陽だまりのような暖かい体温が密かに好きだった
今日もそうならないかなとこっそり期待しつつ中を覗くと、天田は息を呑んだ。
順平は今まで見たことも無い様な真剣な表情で机に向かっていた。
ノートに何事か書き付けては手を止め参考書のようなものと見比べてまたノートに書いていく。
さらさらとペンを動かす音だけが室内に響いて無言のときが過ぎる。
入り口から僅かに見えたその中身には天田には理解できない公式や計算式がぎっしりと書かれていた。
何度も書き直したような跡が悪戦苦闘していることを物語る。
自分が普段どんなに大人びた言動をしてても、
順平が普段どんなに子供じみた言動をしたって、
自分は小学生で、
順平は高校生なのだ。
いつもは順平がおちゃらけているからこそ意識していないが、その差はどうしようもなく広い。
気付かれず勉強を進める今の状況が、本来の順平と自分との距離のようで。
当たり前のことなのにどうしてこんなに苦しいんだろう。
天田は無意識に胸の辺りをぎゅっと強く握り締めた。
暫くしてから、順平は呻き声を上げながら腕を天井に向けて大きく伸ばした。
そこにいたって漸く背後の天田に気付いたらしく声をかけてきた。
「お、天田じゃん」
その顔に先程までの真剣な表情はは一切なくて。
そこにあるのはいつもの順平だけだった。
そのことに、どうしてだか居た堪れなくなって踵を返した。
あれ?遊んでかないの、と不思議そうに問う声にぼそりとこたえる。
「・・・ちょっと、用事思い出したんで」
そっかーじゃあ仕方ねえなーまた来いよ
心底残念そうな声を背中に受けながら立ち去った。
何時だって順平は嫌な顔一つせず天田を迎えてくれる。
その優しさが嬉しいのに、今は辛い。
どうしてだか、年の差が酷く憎らしく思えた。
あとがき
無意識天→伊で。
だいたい12〜1月あたりかなあ?
どうでもいいけど順平の部屋の家具の配置確認せずに書いてます(よくねえよ
矛盾してても気にしないでください。
ゴリラさんにこそっと進呈。
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