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「扉」

オレはオレを、空中から見下ろしていた。
なんとなくこれが夢なんだとわかる。
オレは誰かと一緒に歩いていた。その人の顔は白いモヤがかかって見えないが、この人がオレにとってすっげえ大事な人なのは ひしひしと伝わってくる。
この人もオレのことをそう思ってくれてるみたいだった。本当に誰だ?この人。
悩んでいる間に場面は切り替わる。
オレたちはソファに並んで腰掛け話をしている。なんか、大事な話な気が。
―――怖いか?
―――正直、すっげえこわいっす
ああそうだ。すっげえ怖かった。けどこの人と一緒だから信じられたんだ。
よく見ようと心持ち体を乗り出した瞬間体が急に浮き出した。
「!?」
手足をバタバタさせたが全く効果がなかった。それどころかどんどん遠ざかっていき、もう豆粒にしか見えない。
待てよ!あとちょっとなんだ!!
叫ぼうとしたが、声は出なかった。


「待てよ!」
自分の声で目が覚めた。
「またあの夢かよ・・・」
頭をがしがしと掻く。あー、いらいらする。 謎の夢はほとんどここ一ヶ月見ている。
出てくるのはさっきみたいな映像だったり単語とか写真みたいに切り取ったひとコマや物


弾の入ってない銃

電車

コンビニ

スケッチブック

学校

鐘の音

崩れ落ちる塔

生きること 宇宙

処刑・・・・これは深く追求しないほうがいい気がする。

とか。
けど一番多く出てくるのが「この人」。いつもラストは「この人」とソファで座っている場面で終わる。
しかも最後まで見たことはない。いつも途中で目が覚める。 誰だろう?大事な人っていうのはわかるのに・・・・正にお手上げ侍ってか?
うーんと唸った後ふと時計に目がいった。やっべ。もうこんな時間かよ!?
オレは急いで着替え始めた。


疲れた。
遅刻しそうだからって全速力で走んなきゃいけないわ、授業はビシバシやけに当たるわ、 珍しくやった宿題は急いだせいで忘れるわ、あげくに神社通りかかったら犬にえらい吼えられるわで、 えらい疲れた。
今日は厄日か?まあ、当てられた問題は全部アイツに教えてもらったけど。
アイツにゃなんかお礼におごるか。 ぐてっとラウンジのソファにうつ伏せになりながら考える。ベッドに倒れこみたいけど動く気が全然しねえ。
大体なんでオレの部屋なのに違和感がありまくりなんだ?
なんつーか、こう、よそよそしいっていうか・・・・。 1年間も過ごした部屋なのに。
しかもお気に入りのゲームのカセットはいつの間にか何本か消えてるし。
・・・・・・おっかしいなあ。貸した記憶はないのに、そこらへんにぽっかりと穴があいている。 ああ、そっかいつも――さんの部屋で過ごしていたからか。
ん?そんな記憶はないよな。 つらつらそんなことを考えていると玄関のドアが開く音がした。 オレの親友でアイツこと、戒だ。
「お、戒じゃん。悪い、今日のタ・・・・」
タ?何を言おうとしたんだ、オレは。言いかけようとした言葉が途中で止まる。
不審げな顔をした戒に笑いかける。
「あー、悪い。何言おうとしたのか忘れた」
しばらくオレの顔を見て考え、決心した顔をして近づいてくる。
「・・・・・平気?」
「ん?」
「今日・・・調子・・・・・」
「ああ、これくらいヘーキヘーキ。」
コイツはかなり口数が少ない。けど待っていればきちんと言葉を返してくれるし、 少ない分じっくりと言葉を選んで使っているのを知っている。
それに決めるときはびしっと決める奴だし。 心配してくれてたんだな。
「サンキュ」
そうオレが言うとさらに近寄って来て・・・・
「イテテ!!こらやめろっての!」
うつ伏せになったオレに覆いかぶさってプロレス技を仕掛けてきた。なんでかコイツはオレとのスキンシップが大好きだ。
一種の甘えなんじゃないかと考えているんだが、これはキツイ。こうなったら・・・
「うおりゃ!」
気合一発。伊織選手反撃開始です。・・・・・うお!そーきたか。 なんと戒はオレを仰向けにした後オレの両手を片手で上で一纏めにして押さえつけ (コイツ顔は可愛いくせして馬鹿力なんだよな。反則だ)
「ぎゃはははははは!!!!!!」
体中をくすぐりだした。しかもオレの弱いところばっか的確に攻めてきやがる。 ところがそれだけならよかったのだが最初はくすぐったかったはずの感覚が妙な感じになってきた。
「ははは・・・ちょ・・・まじ・・・かんべん・・・・ひっ・・・・・あっ」
変に甘ったるい、昔いっぺんだけ見たダチが見せてくれたAVの姉ちゃんが出したような声が出てきた。
なんだ、これ。
わかんないけどヤバイ。これはヤバイ。頭のなかで警告音が鳴り響く。
「ぎ・・・ギブ!ギブ!もームリ!!」
白旗を必死で振ると戒が手を止めた。良かったー、ってお前またたくらんでないか?嫌な予感がしたそのとき
「何をしている!」
鋭い声。入り口の方に目を向けると・・・真田先輩がいた。なんか最近この人とすれ違うとき微妙に気まずいんだよな。
まあ、いきなり目の前でぼろぼろ泣かれたらそりゃあ苦手にもなるわなあ。そういやあの日からだったな。 変な夢を見始めたのは。つらつら考えていると苛立った先輩がもう一度さっきの質問を繰り返した。 戒の方を睨み付けながら。
「何をしているんだ」
やけに怖え。ボクシングやってるだけあって迫力がありすぎだよ。顔立ちがいいだけに余計に怖い感じがする。
「プロレスですけど、何か?」 しれっと答える戒。お前さっきと人格違わなくないか?てか、さっさと人の上からどけ。せめて手を開放してくれ。
「そうなのか?伊織?」
うえええ!?オレ?いきなり巻き込まれて混乱しながらも答える。
「あ・・・・・ハイ」
そうオレが答えた途端目をそらして突然階段のほうへ早足で歩き出した。結局何だったんだ・・・・・。
つーかオレはそんな真田先輩の態度に  なんで  こんなに  胸が  い た む ん だ?
「じゅんぺい」
考え込むオレにオレの上から降りた戒が呼びかける。
「ん?」
「ごめん」
「何が?」
「いろいろ・・・・まだっていうのはわかってたけど・・・こうすれば、思いだすかなって・・・」
思い出す。何を?って聞きたかったがオレの中の何かがその言葉を押しとどめた。
これは自分で思い出さなきゃいけないって教える何かが。 よっこらせっと起き上がって代わりにこう言うことにした。
「気にすんなって。オレと真田先輩に接点ないからさっきみたいなの見られても平気だから。 それにもうなんかもともと仲が微妙だったしな!」
言い募るごとに戒の表情が暗くなる。しまった!逆効果だったか!?
「とーにーかーく、気にするな!」
立ち上がり戒の髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
「な?」
「・・・・うん」
納得はしていないみたいだが、笑ってくれた。これでいい。
「はは」
二人で笑いあう。
「何やってんの?あんたら」
玄関に目を向けると呆れたゆかりっちの姿。半目になってこちらを見ている。いつから見てたんだ? 声にだは出さなかったが、オレの表情でわかったのだろう
「先輩が帰ってきた後すぐによ」
「じゃ、けっこう前から・・・」
「見てたわよ」
「げっ・・・・」
何かきまずい。さっさと退散しよう。
「じゃ、オレ部屋戻るわ!!」
だからオレはゆかりっちの言葉なんて聞こえなかった。
「順平を巡っての男同士の三角関係の修羅場にしか見えなかった」
なんて。マジで。そーいうことにしといてくれ。

こういう日はさっさと寝るに限るぜ。頼むから変な夢、出てくんなよ・・・
けどそんなオレのささやかな願いも空しく、夢までオレを苛めやがった。




熱く熱した鉄の棒で内臓をぐちゃぐちゃに掻き回されている気がする。
ありえないくらいありえない所が痛いし呼吸ができない。
「大丈夫・・・・か?」
汗だくになったこの人が聞いてくる。
大丈夫なわけないでしょうか。
そう言いたかったけどやめた。
この人がどれだけ我慢してじっとしているのかわかっていたから。 同じ男だし、この人の欲望がオレのなかにしっかり入っているわけだし。 なのにオレを気遣っちゃて。しょうがねえなあ。シーツを掴んでいた手を背中に回し息も絶え絶えになって言った。
「だいじょうぶ・・・ですから、うご、いて、くださいよ・・・」
自分で言っといてなんだけど説得力ねえな。
「しかし・・・」
ためらうこの人に続ける。
「わるいと、おも、うんだったら、きもちよく・・・・して、ください、よ」
なんとか挑発する笑みを作る。負けることが嫌いなこの人が反応してくれますように。
「・・・ああ」
ゆっくりと動き出したが、やっぱり激痛が走った。
つらかった。 痛かった。 けど、幸せだった。 ずっとこの人といたいと思った。 だから約束したんだ。

「        」って。

「どおわーーーーーーーーーー!!!!!!!」
またも自分の声で目が覚めた。何ちゅう夢だ、ありゃ・・・ しかもいつもは斜め上から見てる感じだったのに、今日は完全に夢の中に入っていた。
・・・・あれだよ、ホラ!ゆかりっちが変なこと言ったから!そのせいだよなきっと。 男に掘られる夢なんて・・・しかもなんでオレが下なんだよ!何気にかなりけなげだし。
リアリティがありまくりの夢に、鳥肌が立った。 恐る恐るパジャマのズボンの中を覗けば、マジかよ。勃ってやがる・・・ オレは深々とため息をつき、トイレに向かおうとした。

ってうお!もうこんな時間かよ。 今日はかったるい卒業式。
ねてよっかな。正直かったりい。 別に寮の先輩とも付き合いがなかったから特に見送るひともいないしなあ。

トイレから出たら、顔洗って、制服に着替えて、ドアを開けて、一歩足を踏み出す。
面倒なだけのはずの卒業式なのに、なにか、大事なことがが起こる気がした。


つらかった。 痛かった。 けど、幸せだった。 ずっとこの人といたいと思った。
だから約束したんだ。

「卒業式に、また」って。

END

あとがき 前回の「思い出せない」の続きです。あと一個で終わるかと。 真田さん視点のも計画していたのですが、  書  け  ま  せ  ん  で し た。
順平視点ならありえないくらいさかさか進むのに・・・・ えーと誤字脱字と大きい矛盾があったら教えてきださい。なるべく修正します。
小さいのは無視の方向でよろしくお願いします。    by明

ちなみにうち主人公の名前、亜藤戒(あとう・かい)です。なんにも考えずに名前をつけたら、 後で芸能人に同じ発音で読む人が存在することを母と兄から指摘されました。
ライドウの時から使ってたYO! 性格は大人しめ。ただし先輩と対峙したときみたいに豹変すえることあり。
好きなことと人は じゅんぺい(ひらがなで呼んでる)とスキンシップ 読書 コロマルの散歩 アイギス こんなのなんで早めに思い出して欲しくてちょっと反応をみようとしたのが今日の奇行に 真田先輩が帰ってくる時間を狙ってあれはやりました(ひでえ)