どんなにつらくても時間は流れるもので。今日の影時間もタルタロスでレベル上げ。
リョージに言われた「世界の終わる日」まであと少し。
やれることは全部その日までにやっておきたい。
そう思ってたのに。気付きたくなかったことに気がついてしまうし。
どーすんだオレ・・・・。
ため息が自然と出てくる。
目の前では戒が風花と話してみんなの状態を確認して、メンバーを決めていった。
今日のメンバーは戒と桐条先輩、ゆかりっち、天田だ。オレ以外喋らないタイプの人間ばっか残ってんな。
風花はバックアップで忙しいだろうし。
いつもだったら・・・。
ちら、と横目で真田さんを見る。真田さんはいつもと変わらない様子だ。
真田さんに話しかけたりして過ごすんだけど。

自覚した途端自分が、どんな風に話しかけてたのか、
とかどこまでが近づいても大丈夫な範囲なのかとかいろいろ考えてイキナリ身動きが取れなくなっちまった。
しかも体調悪いし。
まあ一月にあれだけ雨に降られたあとで上半身裸下半身もびしょぬれのままでボーゼンとしといたらそうなるわな。
あーなんか寒い。
体がゾクゾクする。
「順平君、大丈夫?顔色悪いよ」
気がつくと、風花が目の前で心配そうな顔をして立っていた。
「あー、うん」
風花みたいにかなりカワイイ子に心配されてるのに、真田さんに言われたかったなんて思うオレはもう末期なんだと思う。
「大丈夫だって。これぐらい明日になりゃ治ってるって」
とは言ったものの。
全然大丈夫じゃなかったよオイ。
しっかり風邪に悪化しやがって。
38.5と表示してあるデジタルの数字を見つめる。
頭がボーっとする・・・気持ち悪い。
学校休めるけど、キツイ。

あ、でも・・・・。
「真田さんに会わなくていいからな」
そう。とりあえず執行猶予はついたわけだし、どうすっか考えないと。
だけど熱でイカレタ頭にいい案が浮かぶはずもなく、薬を飲んだらすぐに真っ黒な闇のなかに墜ちていった。



夢を見ていた。
その中でオレは真田さんと楽しそうに道を歩いていた。
いろんなことを話しながら。真田さんも楽しそうに笑っている。そこに、一人の女の人が近寄ってくる。
顔はぼやけて見えないけど、オレは「あ、この人なんだな」って自然と思う。
その途端、さっきまで話していたオレのことなんか忘れて真田さんはその人のほうへ一直線に走っていって抱きしめる。
重なる人の形。残されたオレは遠くから一人その光景を見つめているんだ。『しょうがないさ』って思いながら。


―――順平
あ、チドリ。
―――順平は、本当にそれでいいの?
しょうがないじゃん。オレ、男だし。だから、これでいいんだ。
―――いくじなし。
・・・・ああ、そうだな。ってあのー、チドリさん?何を手にもっていらっしゃるんデスカ?
―――・・・・・。
ちょ、チドリ、オノ、オノは駄目だって!マジカンベン!!!


―――えい
ごいーん。


・・・・・・・・・・。チドリに一発オノで殴られた途端また暗い闇のなかに逆戻りして、
あとはぐちゃぐちゃとしかいいようなない世界をゆらゆらと漂っていた。
内容はよく覚えてないけど、いい夢ではなかった気がする。
それからどれくらい時間がたったんだろう。
ふと、人の気配がした気がして目が覚めた。



目をゆっくりと開けると、ベッドの傍にぼんやりとした人影が見えた。
窓はカーテンを全部閉め切ったままだったから部屋の中は薄暗い。
「さな・・・だ・・・さん?」
なんとなくそんな気がした。まだ学校があるんだからこの人がここにいるはずがないのに、なぜかそう思った。
声がかすれて出ない。苦しい。水。
「・・・・・・」
影からの返事はない。目がだんだん慣れてからもう一度見てみればやっぱり真田さんだった。
真田さんはやけに無表情で水の入ったペットボトルを片手に持っている。
それの蓋を開けぐいっと呷ったかと思うと
「!?ンンんっ!!!」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
急に真田さんの顔が近づいてきたと思った次の瞬間にはもうキスをされ、ぬるりとしたものが口の中を動き回る。
真田さんの口から水が伝わってくる。
どうすることもできなくて、無理やり送られた水を飲む。
飲みきれず零れた水が一筋顎を伝って流れていく。
その間に被っていた布団を剥ぐと、上にのしかかられる。


後はもう、思い出したくない。
オレがどんなに暴れても、止めてくれと頼んでも、何を言おうとも反応せず。
真田さんはオレの抵抗をまるで子供を相手しているかのような簡単さであっさりと押さえつけ。
ただの作業をしているかのように無言でオレを脱がしていく。

オレも必死で抵抗したけど、もともと体勢が不利な上に熱で体がうまく動かせなくて。

それでもオレは心のどこかで期待してたんだ冗談だって、本気にしたかって笑って止めてくれることを。
そしたらオレはマジで怖かったんですよって怒った振りできるのに。
「ああアアあアっっっ!!!!!」
そんなオレの期待もあっさりと裏切られ真田さんは無理にオレのなかに押し入ってきた。
そのまま痛がるオレを気にせずにゆっくりと動き出す。

痛みで涙が出てきそうになったけど意地で飲み込む。
オレにだってプライドくらいあるんだ。
こんなことされて涙なんかみせられるか。

いたい
なんで
どうして
やめろ
じょうだんでしょう
ねえ

さなださん

ぐるぐると頭の中でばらばらのままの言葉が回る。
でも口から出るのは結局悲鳴になっちまう。


キレイな人形みたいに無表情で淡々とコトを進めていく、真田さんが怖かった。
どんな敵と戦った時だってこんなに怖くなかった。
真田さんが一緒だったから。
一人じゃなかったから。

なのに、なんで








途中で気絶したらしく目が覚めた時には部屋には誰もいなくて。
夢かと思いたかったけど、押さえ付けられてあざになった腕とボタンの取れたパジャマや鈍い下半身の痛みがそれを否定していた。






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